noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬についてのエトセトラ」。第11回は「極貧を経験したけど、無駄遣いに罪悪感を抱かないなんて全然羨ましくない!?」です
幼少時代の私の話
私は幼稚園に1年間しか通っていない。毎朝バスで通っていたのに、ある日突然行かなくてもよくなった。
「ナミちゃん、なんで幼稚園来ないの? 病気?」
近所に住んでいる幼稚園の友だちからの無邪気な質問にどう答えていいかわからなかった。
「ちょっとお休みしてるの」
一緒にいた母はそう答えた。
ふたたび登園する時にはどう登場したら一番おもしろいかをアレコレ考えていたが、私が再び幼稚園に戻ることはなかった。
家が貧乏になったからだった。高校も2年生の途中で貧乏になり中退した。2歳下の弟は幼稚園にも高校にも行っていない。
父はギャンブル依存症だった。競艇狂いで、家が買えるほど儲けたかと思えば、それを売っても夜逃げ寸前になるほど負ける。波が激しかった。
両親はともに銀行員で、私が生まれてしばらくは一般的な家族だった。幼稚園に入った頃、父がパチンコや競艇で作った借金の督促状が来るようになり、そのろくでなしな正体が明らかになった。
建設会社の社長令嬢だった母は、新卒で出会った11歳年上の父に一目惚れ。祖父の反対を押し切ってすぐに結婚して退社。世間知らずで一人暮らしの経験もない母は、父が実はダメ人間だと分かった時点ですでに私たちがいて、子どもを連れて別れることもできず「エホバの証人」というカルト的な宗教に救いを求めた。