noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬についてのエトセトラ」。第10回は「映画『国宝』で描かれた他者への嫉妬と東京地方格差を重ねて」です
映画『国宝』を観て改めて痛感したこと
映画『国宝』を観てきた。
任侠の跡取りとして生まれ、親が殺されたことで、歌舞伎役者の花井半二郎(渡辺謙)の家に迎えられた喜久雄(吉沢亮)は、恐ろしいスピードで芸を吸収し、半二郎の息子、俊介(横浜流星)を実力で凌駕していく。半二郎は公演前に交通事故に遭い、自身の代役に、息子ではなく喜久雄を指名する。
俊介は喜久雄の美しさや芸だけでなく、父からの愛情を奪われたと嫉妬するが、喜久雄は任された大舞台を前に怯え「俊介の血を飲みたい」と名門の血に嫉妬する。
「ないものねだり」「持つ者への嫉妬」
それぞれの境遇で、手に入らないものへの渇望や、他者への嫉妬を募らせる姿は、私の心のど真ん中に突き刺さった。
人間らしさとは、やはり嫉妬抜きには語れない、と改めて痛感する。