鉄の意志の謎

そのおばあさまの鉄の意志はどこから来るのでしょう。その謎が解明されたのは、その翌週、再びそのホテルを訪れた時のことです。昼前、ロビー・ラウンジで人待ちをしていると、プール帰りのおばあさまが現れたのです。

彼女が座るや否や、温かい紅茶とキッシュが運ばれてきました。どうやら、泳いだ後にここで軽い昼食を取るのが彼女の日課のようです。その様子があまりに素敵なので思わず見つめていると、私の視線に気が付いたおばあさまがこちらを見てニコッと笑いました。それに勇気付けられた私は席を立ち、彼女のところに歩み寄りました。

失礼を詫びながら、思い切って先週プールでお見かけしたこと、その泳ぎっぷりに感心してしまったことを言うと、おばあさまは、

「少しお座りなさい」

と言います。ちゃっかり座り込んだ私はいつしか、毎日走ろうと思っているのに全く続かないことなど、我が身の恥をさらけ出していました。

おばあさまは「ほっ、ほっ」と笑った後、こう言いました。

「それは走るのが性に合わないからよ」

それを聞いた私はハッとさせられました。なるほど、スポーツには合う、合わないがあります。球技が嫌いな人もいれば、水泳が苦手な人もいます。体が硬い人もいれば、持久力のない人もいます。性に合わないものが続かないのは、当たり前なのです。

「私は前世、人魚だったのよ!」

そう言うお茶目なおばあさまは、90歳を迎えたばかりだと言います。

そして誕生日の日も変わらず、いつものプールで泳ぎ、いつものお茶を飲み、いつものキッシュを食べたそうです。

※本稿は、『パリジェンヌはダイエットがお嫌い』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

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