家にいるはずの家人と息子が消えていた

閑話休題。

さて、思いのほか無印に長居をしてしまった私は、もうめんどくさいから今夜は冷凍餃子でいいか、などと思いつつリュックの中を無印のパスタソースでぱんぱんにして帰宅した。

今日は日曜日。家には息子とパートナーがいるはずである。たいていこの時間は二人でまったり阪神戦を見ているか、YouTubeを見ているか、私に言われてしぶしぶ家の庭の草を抜いているか、オンラインゲームのファイナルファンタジーXIVをしているかである。

なのに、いつもの音がしない。家の中は奇妙なほどにしん、と静まりかえっている。

(どこかでかけたのかな、二人して)

『父と息子のスキンケア』(著:高殿円/早川書房)

そろそろとパントリーに向かい、パスタソースを収納し終える。

家にいるはずの家人と息子が消えていた。いったいどこへ行ったんだろう。二人していつもの買い出しだろうか?

我が家ではコロナ禍を機に、男性陣があまりにもスーパーの食品の値段を理解していないのは弊害があると判断して、食材やお弁当のおかずの買い出しはメンズの仕事になった。息子には最低でも鶏もも肉100グラムの値段の安い高いが判別できる大人になってほしい。ものの値段を知るには買い物が一番いいし、いずれひとり暮らしをはじめるのに金銭感覚が身についていないのは致命的だ。

ところが、家の中にはたしかに人の気配はするのだ。ガサゴソという人間がたてる音もかすかだがする。

(まさか泥棒??)

ほんとうに泥棒だと思ったらスマホをひっつかんでとにかく家の外に逃げるのが正しい判断だが、私は音のしたほうへ様子を見に行った。ミステリードラマでもホラー小説でも同様だが、なぜ人という生き物は現場に向かってしまうのだろう。