一本8000円もするお高い化粧水を……
はたして、二人は、洗面所にいた。おそるおそる隙間から覗いてみると、なんとやつらは、こそこそ声を潜めて話しながら、私の一本8000円もするお高い化粧水をジャブジャブ手に取り、床にこぼしながら顔になすりつけていたのだ!
息子「ねえお父さん、これでいいのかな」
父「いいんじゃない? お父さんもやってみようかな」
い、いいわけないだろ!!(怒) やめろ。こぼすな!! いまこぼしたやつせめて手に塗れ!! もったいないだろ。
「やめろおおおおお!!」
私はその場でドアを開け、ものの値段を知らぬ無知なやろうどもから化粧水をこの手に取りもどそうとして、はたと踏みとどまった。
なぜ二人はこそこそと私のいないときに洗面所にこもっているのだろうか?
そもそもどうして急に、私の化粧水を使っているのか?
え、どうして、なんで? いままで石けんで顔を洗ってもなんとも思わないような二人だったのに。
「あ、お母さん、お帰り」
そのとき私は、ばつが悪そうな、というよりはただただきょとんとしている二人を見て気づきをえたのだった。
(もしかして、スキンケアが、したいのか???)
え、でもなんで急に? おじさんと息子が??
息子は高校生でお年頃だからわかるとして、なぜパートナーのアラフィフおじさんまで???