数カ月後、なぜか長男が…

ところが、その平和な状況は長く続きませんでした。遺産分割から1年近くたったある日、長女の方から私の事務所に連絡が入りました。

「兄が急におかしくなってしまったんです。母に冷たく、まるで別人みたいなんです」

話を伺うと、以前は隣家に住んで世話をしていたのに、母親が体調を崩して介護が必要になってから、長男はその役割をほぼ放棄するようになり、デイサービスへの送迎まで止めてしまったとのこと。

今では母親の家にいっさい顔を出さず、代わりに面倒を見るために訪ねてきた妹たちと顔を合わすと、「お前ら、来るな!」と怒鳴りつけるようになったというのです。

長女からの電話のあとには、次女も私の事務所に直接来て窮状を訴え、さらには母親まで来て「怖い。なんとかしてほしい」と私に懇願する始末でした。

母親は完全な独居状態とはいえないものの、長女と次女が仕事や育児の合間を縫って世話をしに来るには限界がありました。長男が本来、担うべき役割を果たさなくなったことで、家族のバランスが崩れていったのです。

その時点で、すでに税理士が扱える範ちゅうを超えていたといえます。