今日 作中には「戦争反対、平和万歳」とは書いていないのに、戦争ものというだけで反戦のメッセージを読み取られてしまいます。私としては、読者自身に答えを出してほしいんです。「こう思うべき」とは誰も強制できない。もちろん私だって戦争は嫌ですし、起きてほしくはありません。でも、作品に自分の主張を乗せたくはなくて。
武田 僕も、個人的には戦争なんてごめんです。でも、作品の外でそう主張すると、漫画の読み方に影響を及ぼす気がする。作品そのものは、まっさらな状態で読んでほしい。
今日 私たちは戦争体験者ではないからこそ、こういうフラットな描き方になったのかもしれないですね。とはいえ、『はだしのゲン』のような作品を否定したいわけではありません。
武田 僕らの世代が描くものと比較して、『はだしのゲン』が非難される風潮は嫌ですよね。
今日 戦争ものの土台を作ってくれた素晴らしい作品ですし、学校図書からはなくさないでほしいと思います。『cocoon』も学級文庫として置かれることが多いのですが、史実をもとにした作品だと知らず、ただの少女漫画として読んだ人もいるそう。
読み終わってから、「この作品のモデルになった戦争が、過去に本当にあったんだ!」とようやく知るみたいです。驚きましたし、沖縄出身の編集者が「誰も沖縄戦のことを知らない」と憂えていた理由がわかりました。
武田 10代の『ペリリュー』読者の中には、そもそも日本とアメリカが戦争をしていたことを知らない人もいました。びっくりしましたが、この漫画を描いたことに意味があったんだなと思います。