〈発売中の『婦人公論』9月号から記事を先出し!〉
戦後80年が経ち、当時の記憶はますます風化するばかり。そんな今、戦争について考えるきっかけを与えてくれる漫画に注目が集まっている。沖縄、ペリリュー島が舞台の作品を描いた2人の漫画家が、そのテーマに挑んだ理由を語り合う。(構成:野本由起)
戦後80年が経ち、当時の記憶はますます風化するばかり。そんな今、戦争について考えるきっかけを与えてくれる漫画に注目が集まっている。沖縄、ペリリュー島が舞台の作品を描いた2人の漫画家が、そのテーマに挑んだ理由を語り合う。(構成:野本由起)
戦争を描くことの難しさと緊張感
今日 『ペリリュー』は、このかわいらしい絵柄で残虐なシーンもしっかり描いていますよね。
武田 キャラクターは三頭身でかわいらしくしましたが、デフォルメするのはキャラクターデザインまで。戦場で起きた出来事はリアルに描写しよう、とはじめから決めていました。
今日 私は当初、血が流れるようなシーンはぼかして描いていたんです。でも、担当編集者から「現実にあったことをモチーフにしているのだから、怖さや痛みも描いてほしい」と言われて、内臓なども描くことにしました。その助言をいただいて、とてもよかったです。
武田 ただ勇気はいりますよね。
今日 そうですね。グロテスクにしすぎるとエンタメとして成立しませんが、描かないわけにもいかない。その加減を自分ひとりで考える怖さもありました。
武田 漫画はひとりで描いて、作者ひとりがすべての責を負います。アニメは、チームで制作するのでうらやましい。
今日 わかります。『cocoon』が舞台化される時、演劇のチームはみんなで沖縄のガマに入っていて、怖さや深刻さをみんなで共有しているのがとてもうらやましかった。私は担当編集者とふたりでガマに入ったので、あまりの衝撃に具合が悪くなってしまいましたから。