(c)今日マチ子(秋田書店)2010
〈発売中の『婦人公論』9月号から記事を先出し!〉
戦後80年が経ち、当時の記憶はますます風化するばかり。そんな今、戦争について考えるきっかけを与えてくれる漫画に注目が集まっている。沖縄、ペリリュー島が舞台の作品を描いた2人の漫画家が、そのテーマに挑んだ理由を語り合う。(構成:野本由起)

戦争の話を聞くとなぜかバツが悪かった

武田 僕は闘病エッセイ漫画でデビューし、2016年に『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』(以下『ペリリュー』)で初めて戦争について描きました。舞台は昭和19年、日本の統治下にあったパラオのペリリュー島。

日本軍はアメリカ軍を迎え撃ちますが、司令部の全滅後も日本兵たちは戦いが続いていると信じ、潜伏生活を続けていた。こうした史実をもとに、彼らがどうなっていくのかを描いた物語です。

今日 以前からペリリュー島について興味があったのですか?

武田 いえ、僕がペリリュー島を知ったのは今から10年前、当時の天皇皇后両陛下がペリリュー島に慰霊訪問されたのをニュースで見たのがきっかけでした。

ちょうどその頃、「戦後70年企画として戦争漫画を描きませんか」と依頼を受けていたのですが、その企画の監修者が戦史研究家の平塚柾緒(まさお)さん。ペリリュー島の取材をライフワークとされる方で、いろいろなお話をうかがいました。

その際感じたのは、ペリリュー島の日本兵は、自分と変わらない若者たちだったということ。そこで、戦争という状況に置かれた普通の人たちを描いてみたいと思ったんです。