今日 『cocoon』は短い期間のお話ですし、ひめゆり学徒隊は、もう何度も小説や漫画で扱われてきました。それらとどう差別化できるかを考えて行きついたのが、私は女子校出身で、女の子を描くのが好きだという点です。編集者もそこに着目し、女子校的な世界観で描くという切り口を勧めてくれました。

武田 『cocoon』はそれがいいですよね。普通の女の子が思春期から羽化する話として読めますし、戦争ものだからと気負うことなく物語に入っていけます。

今日 登場人物の年齢が『ペリリュー』よりも若いし、妻子もいません。背負っているものが少ないのは、救いになっているかもしれないですね。

武田 普通の女の子だからこそ、彼女たちが戦争と交わっていくことの痛ましさも強く感じました。思春期ならではの視野の狭さ、世界を知らないがゆえのふわふわとした浮遊感もありますよね。

タイトルどおり、繭でくるまれているような、戦争という過酷な現実から守られているような不思議な心地よさもあって。好きな話だなと思います。

後編につづく

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