今日 私が10年に『cocoon』で描いたのも、普通の少女です。この漫画は、沖縄戦のひめゆり学徒隊の悲劇から着想し、フィクションに寄せた少女たちの物語。沖縄に米軍が上陸し、制圧されるまでの2~3ヵ月間を描いた短いお話です。
ただ、編集者から戦争ものを提案された時は、ものすごく葛藤しました。というのも、小学生の頃から平和教育として戦争ものの絵本や漫画を読まされるのが、すごく嫌いだったからです。お年寄りが過去を語っているだけ、そこに未来は何もないと思えてしまって。今、自分が生きている現実と過去の戦争がまったくつながりませんでした。
武田 なぜ挑戦することに?
今日 私に戦争ものを提案したのは、沖縄県出身の20代の編集者だったんです。彼女は沖縄戦が忘れ去られることに危機感を抱いていました。でも、その気持ちが当時はよくわからなくて。だからこそ逆に興味を持ち、08年に沖縄に取材に行きました。
武田 僕は平塚さんに話を聞き、資料を読み込むところから始めましたが、今日さんはいきなり取材に行ったんですね。
今日 そうなんです。私は東京都出身で、沖縄には何のゆかりもないのに、いきなり戦跡に足を踏み入れてしまって……。ただ、最後にひめゆり平和祈念資料館を見学し、ひめゆり学徒隊一人ひとりのプロフィールやコメントを読んだ時に、高校時代の自分や友達の姿と大きく重なったんです。
そこでようやく今の自分と沖縄戦がつながり、描かねばならない、と腹をくくりました。なぜ自分は戦争に興味がなかったのか、裏返しの興味が湧きましたし、当事者ではない私が描くことで、幅広い方に読んでもらえるのではないかと。