鎌田 約300年前に南海トラフ(海底の細長い窪み)沿いで起きた宝永地震(1707年)では、その49日後に富士山で過去最大規模といわれる大噴火が起きました。
それから300年以上が経った現在の富士山は、地下にマグマがぱんぱんに詰まった状態なのです。これがひとたび噴火すれば、溶岩流や土石流の被害が広範囲に広がる可能性がある。
それだけでなく、火山灰がコンピュータなどの電子機器に入り込むことで、通信や交通などの機能がダウンしてライフラインが軒並み停止するリスクも大きいのです。
岸本 噴火対策には、防災グッズとしてゴーグルが必要ということも、初めて知りました。
鎌田 火山灰の粒子の中には鋭利な形をした微細な火山ガラスや鉱物が含まれているため、目や呼吸器に入ると健康被害をもたらします。なのでゴーグルとマスク、レインコートと帽子もあったほうがいい。
岸本 火山灰による被害は長く続くという特徴もあるとか。
鎌田 火山灰は濡れると漆喰のように固まってしまう性質があるので、水で掃除をして下水に流すわけにもいきません。高温の溶岩の除去も難しい。江戸時代の富士山の噴火でも江戸の町に5センチの火山灰が積もったと記録にありますから、完全に除去するまでどれだけの時間と手間がかかるか……。
その非常事態に備える国や自治体の仕組みも、皆さんの準備も、まだまだ不完全だと危惧しています。