地球科学者の鎌田浩毅さん(左)とエッセイストの岸本葉子さん(右)(撮影:岸隆子(Elenish))
政府は今年1月、30年以内に南海トラフ巨大地震が起こる確率を「80%程度」に引き上げました。漠然とした不安が広がるなかで、地球科学者の鎌田浩毅さんは、「2030年代に必ず起きる」と力説します。日本列島に差し迫る危機とは?私たちができる備えとは? エッセイストの岸本葉子さんと考えます。(構成:山田真理 撮影:岸隆子(Elenish))

前編よりつづく

被害予測は東日本大震災の約15倍

岸本 地震予知は「できない」というイメージでしたが、先生は、「南海トラフ地震は2035年プラス・マイナス5年の間に」と断言なさっています。その理由を教えてください。

鎌田 地震が起きるメカニズムを考える時に欠かせないのが、プレート・テクトニクス理論です。これは、地球はプレートという複数の厚い岩でできた板で覆われており、それが互いに異なる方向へ動く時の相互作用で、地震や噴火が起きるという考え方。

日本列島は2つの大陸プレートと、2つの海洋プレートに取り囲まれています。海洋プレートは年間8~10cmの速度で、日本列島が乗った大陸プレートの下に沈み込んでいる。それに応じて大陸プレートが引きずり込まれ、あるところで限界に達すると、元に戻ろうとしてポンと跳ね返る。これが大きな地震の仕組みです。

仮に、跳ね返る場所が海の中だと、海底が隆起して海の水が高く持ち上げられ、それが陸地に到達すると津波になります。

岸本 昨年の能登半島地震でも、海岸が大きく隆起しましたね。