日本列島を取り囲む4つのプレート(『大人のための地学の教室』より)

鎌田 港が干上がると、漁師など困る人が大勢いたため、海底が隆起した記録は昔から日本各地に残されています。特に南海トラフのある静岡沖、名古屋沖、四国沖の記録をたどっていくと、およそ100年に1回隆起が起きていることがわかる。

そして前回、南海トラフ沿いに昭和南海地震が発生したのが、1946(昭和21)年。その時に地盤が隆起した高さから次に起きる時期を計算すると、2035年をピークとしてその前後5年という数字が出ました。

岸本 それより細かい年月日の予測ができたら、対策もしやすいのですけれど。(笑)

鎌田 地震現象は「複雑系」といって、どれだけ細かくデータを集めて最速コンピュータで解析しても、必ず誤差をともなうのです。そのため日本地震学会も「日時を特定した短期予知は不可能」と明言しました。とはいえ、「2035年前後」には確実に起きると分析されていますから、「しっかり準備しましょう」と強調したいですね。

岸本 予測される被害は、どれほどのものになるでしょう。

鎌田 2011年に起きた東日本大震災では地震と津波による死者が約1万5000人、行方不明者がおよそ2500人でした。人口が多い西日本の都市部を含み、沿岸の広い地域で最大高さ34メートルの津波が襲うとされる南海トラフ巨大地震では、約15倍、29万8000人の死者が出るという予測です。

岸本 想像するだけで恐ろしく、思考停止になりそう。