義務教育の主な学びは1年で取り戻せる

不登校の子どもについて、「学校に行かなかったら勉強についていけなくなるのでは」と不安に思うかもしれません。でも、実際には義務教育の9年分の学びを取り戻すのに、9年もかかるわけではありません。本人に学ぶ意欲があり、健康なら、だいたい1年くらいで取り戻せるものです。ですので、たとえ長い間学校に行かず家にいたとしても、そんなに焦る必要はありません。

不登校経験者が集まると、「どの時期に勉強した?」という話になることがあります。すると、「会社に入ってからの半年間かな」とか、「大学受験前の3カ月くらいで一気に勉強した」という人があたりまえのようにいます。タイミングは人それぞれですが、集中して爆発的に学ぶ時間というのはあるので、学力の遅れ自体は、さほど心配いりません。「多くの人は1年ほどで、義務教育の主な内容はつかめる」と話す教育関係者もいます。

『小学生不登校 親子の幸せを守る方法 400人の声から生まれた「親がしなくていいことリスト」』(著:石井しこう/KADOKAWA)

私が一緒に働いていた人は、小学校時代、学校には行ったり行かなかったりで、勉強もしていませんでした。それでも高校に進学し、さらに大学を目指そうとしたとき、「漢検2級に合格すると奨学金がもらえる」と知り、奨学金を得るために勉強を始めたそうです。それまで小学3年生レベルの漢字でつまずいていましたが、半年後には漢検2級に合格。このような話は決して珍しいことではありません。

また、その人に特別な能力があったわけでもありません。実際、不登校でも自分のペースで勉強を進め、最終的に大学に進学した人たちも多くいます。注目すべきなのは、本人がやる気を出すまで、周囲が無理に勉強をすすめず、何も強制しなかったことです。

まわりの大人は、「この子はいつ勉強するんだろう?」とやきもきするかもしれません。でも、無理にやらせる必要はありません。その子なりのペースを大切に見守ってあげると、勉強に対して具体的な不安を持ったときにスイッチが入ります。ですので、そのときがくるのを焦らずに待ってあげてください。