ドリルは破り捨てていい
不登校や行き渋りになると、勉強の遅れを心配し、ドリルなどで休んだ分の遅れを取り戻そうとするのも、親がやりがちな「あるある」です。でも、ぶっちゃけ、やりたくもないドリルなら、破り捨てたほうが、子どもの回復が早い!
子どもの学ぶ力を信じるとき、やはり行き渋りや不登校の最初の頃が大事です。その時期の子どもは、まだ学びの準備ができる状況ではありません。精神的に苦しんでいるときなので、そのときはいったん学びから遠ざかってあげるほうが、後の学びの意欲につながります。ですので、何もしなくて大丈夫。心配いりません。
私自身も、不登校を始めた当初はものすごく不安で、母も不安そうにしていました。そんなとき、たまたま訪問販売で高級教材を売りにきた人がいました。まだパソコンが普及していなかった頃の音声や映像教材がセットになった家庭学習教材で、「これさえあれば中学校の勉強は全部できる」と言われ、20万円くらいする教材を買ってしまったわけです。でも、結局、ひとつもやらなかったんですよね。やれなかったんです。
私の両親は設計士なので、家の中の作りをよく考えて作っていました。そのため、教材も私が一番よく通る動線上に置かれていたのですが、私はまったく手をつけませんでした。そうしているうちにだんだんと家の中の空気が重く沈んでいき、おそらく母だと思うのですが、ある日、思い切ってその教材をすべて捨てました。もしかすると、母は私に「捨ててもいい?」と聞いたのかもしれませんが、私の記憶では、ある日突然消えたという感覚です。
すると、まるで風が流れるように、家の中の空気が一気に軽くなりました。私自身もさまざまなことに興味を持てるようになり、フリースクールでの活動もしやすくなりました。あのとき教材を捨てたことは、母の英断だったと思っています。