深夜1時すぎまで飲んでは喋り、喋っては飲み…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは東京都の70代の方からのお便り。娘に背中を押され、中学の同窓会で55年ぶりに再会したクラスメイトの居酒屋に、女友達を誘い行ってみることにしたそうで――。

最強メンバーで集まる日

3月末の誕生日で、私は70歳に。「散々苦労したんだから、これからは自由に生きれば」と、娘に背中を押され、小さな、いや、私にとっては大きな計画を立てた。2月に行われた中学の同窓会で、55年ぶりに再会した男友達から「地元で居酒屋をやっているから、遊びに来てくれ」と誘われていたことを思い出す。故郷にいる親友のK子にメールをし、一緒に行ってみることにした。

5月中旬のある日、私は東京から栃木県に向かった。集まったのは、私とK子、故郷で仕事をしているT君、そして店主のU君。この4人は中学の同級生だ。半世紀以上も前、片田舎にあった一学年150名程度の学校のクラスメイト。昭和40年代、当時は男女が気軽におしゃべりできる雰囲気でもなく、何となく同じ教室にいる程度の仲だった。

私とT君は隣席だったが、あまり話をした記憶がない。彼はいつも下を向き、鉛筆を指でくるくると器用に回しながら、じっと教科書を見つめていた。

T君も私も酒を飲み、場が温まったところで彼に聞いてみた。

「あの時、ずっと下向いて、勉強してたの?」「いや、誰かに話しかけられるのが嫌で、勉強するふりをしてた」「私が隣の席だったの覚えてる?」「まったく記憶にない」。私は少し悲しくなった。

U君が切り盛りする町外れの居酒屋でつまみを食べながら、さらに昔話に花が咲く。会社を定年退職後、一から修業して開店したという狭いけれど清潔な店。やんちゃだった中学生は、すっかり一国一城の主になっていた。