1.観察:五感を研ぎ澄ませる

一流のサービスパーソンの第一の特徴は、その鋭い観察眼です。彼らは常に周囲の状況を細部まで把握し、お客様の微細な変化や兆候を見逃しません。

鈴木さんは、前田様を目にした瞬間、その歩き方や表情、持ち物などから、現在の状況を瞬時に把握していました。杖をついていること、少し顔色が優れないこと、1人でお越しになられたことなど、わずか数秒の観察で多くの情報を収集していたのです。

この「観察」は、単に目で見ることに留まりません。

お客様の声のトーンや話し方、香りや温度感など、五感を総動員して情報を集めています。たとえば、声に疲れがないか、歩き方に違和感はないか、季節に合った服装をしているかなど、細部にまで注意を払います。

帝国ホテルのレストランで働くベテランスタッフの中には、お客様が入店された瞬間の表情や服装、同伴者との会話の様子から、その日の気分や食事の目的までも察知する人がいます。それは長年の経験から培われた「観察眼」の賜物です。