多様性を活かすチーム運営

一人ひとりの強みや特性は異なるため画一的な指導ではなく、その人の個性や能力に応じたアプローチが重要です。

たとえば、論理的思考が得意な人には分析業務を、コミュニケーション能力に長けた人には対人折衝を、創造性豊かな人には企画業務を、といった具合に、それぞれの強みを活かせる役割分担を心がけることです。

さらに、指導の場面においても個々人の特性に合わせた柔軟な対応が求められます。あるベルキャプテンは、「人によって違うのに、なぜ教え方が1つしかないのだろう」と感じ、個々の多様性を常に意識して指導をしています。

同時期に入社したAくんが言い訳をしない真面目な性格であったため、彼は本人が理解できるように丁寧に説明し、まずはやらせてみるという指導法をとっていました。一方、Bくんは言い訳をするタイプだったので、あえて言い訳をさせてから、伝えるべきことは伝え、それだけでなく、その後の本人の様子を見ながら気持ちを推し量って対応したそうです。

伝えたい本質は同じであっても、人によって伝え方を変えることの重要性を理解し、たゆまぬ努力を続けているのです。「一人ひとりを駒ではなく、キャラ(個性)として大切に育て、指導の指標にしています」という彼の言葉には、メンバーへの愛情と深い想いが詰まっています。

ただし、これは適材適所のみに留まらず、その人の成長意欲や将来ビジョンも考慮する必要があります。現在の強みを活かしながらも、新しい挑戦の機会も提供することで、個人の成長と組織の発展を両立させることができるのです。

 

※本稿は、『サービスを言語化する』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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サービスを言語化する』(著:大野加奈/クロスメディア・パブリッシング)

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