水はおもしろい
考えてみれば、水はおもしろい物質です。
水を冷凍庫で0度以下にキンキンに冷やすと、氷(固体)になります。
やかんや鍋でぐつぐつと100度に沸騰させれば、水蒸気(気体)にもなります。
つまり、水は、液体(水)にも固体(氷)にも気体(水蒸気)にもなることができる物質です。
ただし、液体の水でいるためには、「1気圧なら0度から100度まで」という厳しい条件があります。でもこれまたおもしろいことに、地球で私たちが暮らす場所の多くは1気圧前後で、気温もだいたいこの条件をうまく満たしているのです。
いっぽう、宇宙ではまったく様子が違ってきます。
宇宙空間は、ほぼマイナス270度の極寒で、ほとんど空気がない真空です。液体の水は一気に凍ってしまいます。
宇宙飛行士のラッセル・シュワイカート氏によると、宇宙船から見える最高にきれいな景色に、“キラキラ七色に輝く氷の粒”というのがあったそうです。七色の氷が輝きながら、はらはらと暗黒空間に散っていくのをイメージすると、幻想的で神々しい風景が頭に浮かんできませんか。
七色の氷の正体は、船外に出された宇宙飛行士たちの「おしっこ」。
液体は宇宙空間に出たとたんに凍りついて、たくさんの氷の粒になります。それが夕暮れどきには太陽の光を反射して、「信じがたいほど美しい」のだそうです(※1)。
少しがっかりしたかもしれませんね。
でも私は、それを知ってますます美しい風景だと思うようになりました。だって、生命のない暗闇の空間に、生命の証拠たる液体が解き放たれて、輝きながら宇宙の一部になっていくのです。もし宇宙空間に意識があって、私がその宇宙空間だとしたら、永遠の暗い時間の中で一瞬だけぱらぱらと七色に散る命の氷は、たとえようもなくロマンチックで麗しく見える気がするのです(ちょっとマニアックかもしれませんね)。