劇場で会った下級生たち

初めて観る側に

在団中何度か式典に出させていただきました。
いつも式典ではタカラジェンヌの正装、黒紋付に袴、もしくは色着物に袴でした。
大階段で並ぶときは学年順で、下級生が上段、上級生が下段の安全地帯でした。
大階段に草履で立つのは、ヒールの靴で立つよりも怖く、ヒールの方が怖いと思われそうですが、草履の底が硬く自由がきかないのです。
そんな草履の怖さを覚えつつ、最初は上段だった並びも、10年経つと前の方になりました。

時は流れ、初めて観る側になると、大階段に並ぶ着物姿のタカラジェンヌのその光景は圧巻でした。
ずっと変わらないタカラジェンヌの正装。
観ている側なのに、自然と背筋も伸びて身の引き締まる思いがしました。

そして、この日もうひとつとても楽しみにしていたのが、二部に行われた月組公演『GUYS AND DOLLS』。
大地真央さんと黒木瞳さんのコンビによって初演されたこの作品は、昭和、平成、令和と受け継がれてきたブロードウェイ・ミュージカルの名作です。
私は平成時代に、ハリー・ザ・ホースという役で出演していました。
トップスターは紫吹淳さん。
スーツの着こなしが素晴らしくかっこいいトップさんでした。

そんな令和の『GUYS AND DOLLS』は、新しい演出にアップデートしていました。
大物ギャンブラーでプレイボーイのスカイを演じるのは鳳月杏さん。
紫吹淳さんに負けず劣らず、スーツの着こなしは素晴らしく、安心安定のかっこよさです。

2階席から観ると、舞台の奥や端の方の人たちまで見れ、ダンスナンバーの全体の動きも楽しめました。
ちらほらと知った顔も見え、月組のみんなが頑張っている姿に胸が熱くなりました。
「下級生達が、ちなつ(鳳月杏さん)を見て育っていくんだろうな」そう思うと、これからが楽しみになりました。

先輩たちが築いてきた舞台を受け継ぎ、繋ぎ、後輩たちがさらに新しい色を加えていく。
歴史が脈々と続いているのを感じた一日でした。