怒りを文字化すれば、冷静になれる

私は、怒りを文章を書くことによって解消しています。

文章のいいところは、感情に振り回されることが少ないことです。口先だけの言葉なら、「このやろう!」「バカやろう!」と叫んでしまえば、それで怒りを表現できます。

けれども文章となると、読んだ人に理解してもらうために、そのときのシチュエーション、自分の感情、主張を冷静に再現しなければなりません。

つまり、文字化するには冷静さや論理性が求められます。

その作業の中では、怒りの感情はいったん脇に置かなければ、他人に伝わる文章は書けません。

「彼の口から発せられる言葉に知性のひとかけらも感じられない。相手の感情への想像力がない。ただただ湧いてきた言葉を垂れ流すばかり。私の脳は、ぴくぴくと痙攣しはじめる……」

これは極端な例ですが、たとえば、「このやろう」「このバカ」を、こうやって冷静に表現してみる。

人は誰でも、文章を書いていると、「何なのだろう、この怒りは?」と、自分の感情を分析しはじめます。

分析しているうちに、怒りの種を冷静に見つめることになります。もはや「生まれたての怒り」ではなくなってしまいます。

そんな方法で、小出しに言葉にしたり、文章にしたりしていけば、あなたも怒りの処理の達人になれます。

 

※本稿は『感情的な自分から卒業する本』(アスコム)の一部を再編集したものです。

 

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感情的な自分から卒業する本』(著:和田秀樹/アスコム)

感情とは何でしょうか?
目には見えないけど、確かにあなたの中に存在しています。自分にとって大切なものである半面、自分を振り回すやっかいな存在でもあります。

「ふざけるな!」「何度言ったらわかるの?」「自分勝手すぎる!」「なんでそんなひどいことが言えるの?」「相手がそんな態度を示さなければ、こんなに頭にくることはないのに!」

思わず相手を責めてしまいます。でも、残念ながら、どれだけ言っても相手が変わることはほとんどありませんし、変えるためには、とてつもない時間と労力がかかります。感情的に反応して損をするのはあなた自身です。