美しいからこそ残酷に映る
<戦争パートでは、軍隊生活の過酷さや壮絶な飢えが描かれた。その一方で、植えた嵩が野草を食べるシーンでは綿毛が飛び、幻想的で美しい演出がされた>
空腹に苦しむ嵩たちがタンポポを食べる時にちょっと羽根を飛ばしたんです。それは、美しい方が残酷に見えるから。
二宮和也さん演じる清が登場するシーンも幻想的に演出しました。今回、二宮さんとは初めてでした。後で聞いたら、二宮さんの祖父がシベリア抑留を経験しているそうで、戦争を描くことに思い入れのある方。戦争パートではワンシーンの出演でしたが、「このシーンに賭けてきた」という印象があって、それは北村さんや制作チームにも伝わりました。セリフの順番とかいろいろ相談しましたよ。
<戦争が終わると、徐々に物語の雰囲気も明るくなっていった。だが、戦地で少年に殺害された岩男のことをのぶに長い間話せなかった嵩、戦争の取材を始める蘭子…。戦争が残したものが描かれていく>
高知新報のパートが始まるときにね、「戦争が終わって、社会自体もすごく明るく、希望に包まれた世の中になっているので、キャラクターとして、皆さんそれを体現してください」ってことをキャストのみなさんに申し上げた記憶があります。
でも、映像はあえて変えなかった。戦時中と地続きです。戦争ものだと戦時中はやや暗い画面にして戦後になると画面を明るくする、ということをやるケースが多い。でも、あえて画面のルックを変えず、戦前と戦後が地続きであるということをやりたかったんです。