蘭子のモデルの一部は…

<『あんぱん』は豪華なキャストも話題を呼んだ。妻夫木聡、河合優実、松嶋菜々子、とドラマや映画の主演クラスが脇を固めた> 

 河合優実さんは疑問に思っていることはすぐに聞いてくれます。理解して「大丈夫です」となったら本当に大丈夫なんです。 

僕は20年ほど前に、田中裕子さんとお仕事をご一緒したことがありますが、その時の田中さんと通じる部分があって。河合さんは腰が据わって全身で役としてちゃんと生きてお芝居している、存在としてちゃんと強く伝わってくる。演出として細かく注文しているわけではないのですが、座る時の動作や話し方も年を重ねるとちょっとずつ細かに変えていましたね。

(『あんぱん』/(c)NHK)

 出征する豪と蘭子の最後の夜のシーンが話題になりましたが、あの場面では、豪を演じた細田佳央太さんも、たたずまいがすごく良かった。河合さんだけでなく、相手役の細田さんもすごく良い演技をされたからこそ生まれたシーンだと感じています。 

 余談になりますが、中園さんは、蘭子のモデルの一部は脚本家の向田邦子さんだと話していました。向田邦子さんは映画雑誌編集者のキャリアがありました。だから蘭子は映画の記事を書き、文筆業を始めたんです。出征する豪ちゃんを蘭子が追いかけて思いを打ち明けるシーンは、映画『あ・うん』とか向田邦子作品のオマージュを意識しました。