今田美桜さんがヒロインを務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。子どもたちの人気者・アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと、妻・暢さんの夫婦をモデルとした物語です。<柳井のぶ>を今田さん、<柳井嵩>を北村匠海さんが演じています。逆転しない正義を体現した『アンパンマン』を生み出した嵩とのぶの物語はまもなく終わりを迎えます。主演級俳優が続々登場する豪華なキャストや、まるで映画のような雰囲気だった蘭子と八木のシーン…。半年の放送期間中、話題が尽きなかった『あんぱん』。チーフ演出の柳川強さんに制作の裏話をお話を伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 油原聡子)
俳優の力を感じた
主演の今田美桜さんや嵩役の北村匠海さんも含めこれだけの豪華な人がそろったドラマをやってみて、俳優さんの力のすごさを改めて感じました。それぞれが役をつかんだ上で、持ち味を出してくださった。作り手としてはものすごく楽しい現場だったので、それが見ている方にも伝わったなら嬉しいかぎりです。
<初回冒頭のシーンでは、アンパンマンの絵本を描く嵩にのぶが声をかけるというシーン。今田さんと北村さんの老けメイクが話題になった。初回と重なる第120回の場面は改めて撮影し直した。2人の外見も初回とは異なり、老けメイクは施さなかった>
冒頭のシーンが120回で出てくるという計算が当初からあったわけではありません。ただ、「逆転しない正義を探す夫婦の物語」というメッセージは、冒頭できちんと打ち出そうと思ったんです。脚本を作っていく中で、後に同じシーンが出てきたときにうまくはまればそれでいいし、はまらないならそれでいいくらいの感覚でした。同じ場面を2度正確に作るつもりはありませんでした。
やなせさんがアンパンマンを生み出したのは50代になってから。冒頭での老けメイクは、私たち制作側の本気度を示したかった。20代の俳優さんが50代を演じる時もリアルにつくるんだよ、という…。冒頭はそうでしたが、逆に120回ではあえて老けメイクはしませんでした。今までの自然な流れで2人が老けてきたのは感じてもらえると思ったので、老けメイクをするタイミングはもう少し遅くしています。