のぶのキャラクター難しさ 

<蘭子やメイコなど脇役の人生もしっかり描かれた『あんぱん』。ヒロインののぶは、幼いころはハチキンと呼ばれ、男勝りだったが、成長して嵩と結婚後は、「何者にもなれなかった」と悩むようになる。朝ドラでは、何かを成し遂げた女性の人生を描くことが多いなかでのぶ役は難しい人物像だった> 

(『あんぱん』/(c)NHK)

 中園さんと最初にどういう流れでやっていくか打ち合わせをしたときに、「何者にもなれなかったヒロイン」という話は出ていました。計画通りです。朝ドラのヒロインは何かをやる人。でも、そうじゃない人をやることが、むしろ現代的で新しいと話しました。中園さんは「知り合いにはそういう人多いのよ」とおっしゃっていた。みんながそういう悩みを抱えているなら、やることに意味があると考えたんです。  

今田さんは、難しかったと思います。アクションをする方が楽。何かをなすわけではないけれど、のぶは、ヒロインとしてちゃんと中心にいなくちゃいけない。今田さんも僕らも難しいと思っていたから、割と事細かに相談する回数が中盤以降は増えたような気がします。「何者にもなれなかった」というのぶの葛藤はドラマの核のひとつでもありました。毎週、のぶの演技について細かく相談してその積み重ねでのぶが葛藤を吐露するシーンがきました。今田さんは、よく演じてくれたと思っています。

撮影に入る前から、のぶは「エンパシー能力が高い人」という位置づけをしていました。「エンパシー」とは、同情(シンパシー)ではなく、もっともっと相手の身になり一緒になってその感情や考え方を理解していく能力のことです。「人のために走り続けるのぶ」は、このエンパシー能力を誰よりも持っている人だ、と考えていました。

アンパンマンの「愛と勇気」は、のぶのそんな生き方が嵩に影響を与えたに違いないと考えていました。今田さんは、ドラマの中心にいて、いろいろな人に影響を与えるヒロイン・のぶをさりげなく演じきったと思います。撮影が終わって感じるのは、たぶん今田さん自身もこのエンパシー能力が高い人だろうということ。だからこそ、今田さんが26週にわたって演じたのぶが、ぶれなかったんだと思っています。

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2025年度前期 連続テレビ小説あんぱん
【放送予定】 毎週月曜~土曜 ●総合 午前8時~8時15分
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 ※土曜は一週間を振り返ります
<毎週月曜~金曜>
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【 作 】 中園ミホ
【出演】今田美桜/北村匠海/加瀬亮/江口のりこ/河合優実/原菜乃華/細田佳央太
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