「ウィルスと戦うため」とレモンにかぶりつく

最初は、ロックダウンの結果学校に行けなくなった子どもたちの家での様子が動画や写真でアップされた。テラスでシャボン玉をする子、ケーキを作る子、粘土遊びをする子、本を読む子、部屋いっぱいに紐を張り巡らせて潜り抜けて遊んでいる子。それぞれに誰かが何かしらコメントをつけている。

次にある子どもが「みんな、チャレンジしてみて」と言って始めたのが仮装。カーニバルで使ったのであろう仮装グッズで、スーパーマリオやスパイダーマン、バットマン、ピエロなどに変身した写真が次々にアップされた。親たちも加わって家族みんなでなかなか楽しく過ごしている様子が伝わる。

翌日のチャレンジは「レモン」。梅干しに馴染みのある私たちと違って、スペインの子どもたちは酸っぱいものが苦手な場合が多い。ある子どもが「ウィルスと戦うため」と言って、酸っぱさに苦しみながらレモンの輪切りを食べている動画がアップされた。そこからチェーン的に、クラスメートたちもチャレンジ。涙目になって必死にレモンの輪切りを食べる子どもたちの動画が続々と投稿された。

動画の間には、あるお母さんの「家でじっとしてるから便秘で困ってる」というメッセージ。それに答える誰かのお父さん。「君もレモンの輪切り食べて、ついでにオリーブオイル飲んでみな」。

その翌日のチャレンジは、ある兄弟が始めた。「みんな、これできる?」と、クッキングペーパーで大きいスプーンと鼻の頭を強くこすり、スプーンのさじ部分を鼻にひっつける。摩擦で落ちない。

両手を離して1、2、3、4……と真顔で数える兄と弟。「もういいよ、永遠に数え終わらないから」というお母さんの声で動画が切れた。そこから子どもも親たちもスプーンを鼻にひっつけるという宴会芸のような場面の動画が並んだ。どの家にもありそうなもので簡単にできる遊びだ。

ある朝起床してスマホの電源を入れたら、100件以上もこのようなやり取りが記録されていた。彼らのことも、スペインにいるほかの友達や親戚のことも心配だけれど、SNSを見てなんだか少しほっとしている。

困難な時でもユーモアを忘れず、実際に会うことはできなくてもSNSを利用して人と繋がることで気持ちが救われることがある。私も久しぶりに友達にメッセージを送ってみた。