コロナ騒動でバルに行けなくても…
アメリカ合衆国、イタリアと並んでコロナウィルス感染者数、死者数が多いスペインでは、現在、全国でロックダウンが実施されている。
スペイン人は外に出ることが好きな人たち。人生初のロックダウン経験は、精神的に堪えている人が多いのではないかと思っていた。
まして、バルに行けない生活なんて想像できなかっただろう。バルとはお酒を飲むのはもちろん、食事や喫茶もできる食堂のこと。朝起きて、バルでエスプレッソを1杯飲んで仕事に行き、11時ごろ職場近くのバルでクロワッサンやトースト、もしくはバゲットサンドとカフェオレの朝食。その後13時ごろにバルで定食のランチ。いつものバルでいつものウェイター、ウェイトレス、常連客との会話を楽しむ。
寝つけない真夏の夜には、さくっと1杯冷えたビールを飲みに行ったり、休日の遅めの朝、一家総出でタパスをつまみながらアペリティフを飲んだり。地元のサッカーチームの試合はバルのテレビで見るという人も。老若男女、0歳児から飼い犬まで連れだってバルに行く。スペインでバルは近隣の住民同士や友人、地域といったコミュニティの中心的な役割を果たしているのだ。
コロナ騒動でバルに行けなくなってしまったら、もはやスペイン人はスペイン人でいられなくなるんじゃないか……と心配していた。が、彼らはコミュニティを失ってはいないようだ。
SNSという便利なツールを彼らは上手に利用している。災害時には、悪用されることもあるが、私が関わっているスペインの人たちは、SNSでユーモアを発信し、もともとあったコミュニティを活性化させている。
例えば、私の子どもが通っていた小学校のクラスメートのグループ。厳密には彼らの親(なかには祖父母も)が、WhatsApp(ワッツアップ)というLINEのようなSNSのグループに登録して繋がっている。
普段から宿題について、遠足の持ち物について、行事の始まる時間について、など質問と回答がとびかっていたが、あくまで学校に関わることに使用する真面目なSNSだった。ところが今回3月半ばのロックダウン宣告から、連絡網のようだったグループがこれまでになく活気を帯びている。