家庭学習に付き合う時点でもうボロボロ

しかし、保護者にとっては寝耳に水である。家でお母さんが教えてくれたからOK、そこはすっ飛ばします!って言われているような気がしてしまうし、学校再開までの家庭学習指導がプレッシャーになってしまう。

コロナの影響でガタガタになった仕事をなんとかこなしながら家庭学習に付き合う時点でもうボロボロだし、学校レベルの理解を子供に与えているという自信などない!と感じる保護者は多いのではないだろうか。私自身もニュース記事を見て、そんなに家庭学習に期待されても困ると思ってしまった。一人っ子の親ですらそうなのだから、2人以上いるご家庭の困惑はいかほどだろうか。

恐らく、文部科学省の担当者は、今回の記者会見での声明を聞いて保護者がどう感じるかまでは考えていないのだろう。あくまで現場にいる記者に向けての言葉であって、事務的な報告以上の解釈をされることを想定していない。そこを責めるつもりは、私もない。

北海道で、夫と小学4年生の娘と暮らす瀧波ユカリさん(撮影:円山恭子)

だが、想像してみてほしいと思う。突然の休校を言い渡され、子供の居場所の確保に奔走し、心待ちにしていた卒業式や入学式に参加もできず、これからどうなるのかもまったくわからず、子供の体調やメンタルが気がかりでしかたがない親たちのことを。

そしてわかってほしい。そんな私たちがずっと辛抱強く待っているのは、言葉だ。記者や自治体や教育委員会や学校に向けた言葉ではなく、私たちにむけての言葉だ。それも、気休めにもならないうわべだけの激励メッセージではなく、覚悟のある言葉だ。非常時においても子供に教育を受けさせることを諦めない、子供たちとその保護者たちを絶対に見捨てない、そんな覚悟が伝わってくるような、責任感のある言葉だ。

コロナによって私たちが行動変容を迫られて、もう1ヶ月半が経つ。文部科学省はすぐにタブレットを全児童に配ってオンライン授業を開始せよ、とか無茶なことは言わない(やってほしいけど)。せめて言葉を。私たちが安心できるような言葉を、私たちに向けて届けてください。そういうのは自分たちの仕事ではないと言うのであれば、考えを改めてください。あなたたちの仕事です。