寝ないで映画を撮ることを美談とは思わない

大森監督は、どういった画を撮るか決断が早く、全くぶれないので、撮影の進行が早い。しかも早く終わらすため慌てて撮影をしているわけでは決してないんです。監督に明確なビジョンがあるから、余計なカットを撮らない。

実はこの『おーい、応為』は「映適(日本映画制作適正化機構)」という、映画の発展のため映画作りの現場環境を適正化するよう設立された第三者機関に認定を受けた映画なんです。

「映適」に認定されるためには、例えば1日の作業を完全に終えるまでを13時間に収めないといけないのですが、そういった約束事をきっちりと守りながら撮影が進行しました。いや、それ以上だったかもしれない。今後はこの形がスタンダードになるべきだなと思います。個人的には「寝ないでやってる」という話なんかは美談でもなんでもないと思っています。

『おーい、応為』場面写真
同業の絵師に離縁され実家に戻るお栄。長澤まさみは時代劇初主演 (c)2025「おーい、応為」製作委員会

実際、ちゃんとスタッフの方たちが寝れていると、活気が違ってくるんです。いいアイデアも出てくるし、現場が殺伐としない。そして俳優部もリラックスする時間や、準備時間、今回は絵の練習の時間をたっぷり取れる。いい事しかないと思いますね。