辺鄙なところが好きだった

ヘルン(ハーン)は見る物聞く物すべて新しいことばかりですから、一々深く興に入りまして、何でも書き留めておくのが楽しみでした。

中学でも師範でも、生徒さんや職員がたから好かれますし、土地の新聞もヘルン(ハーン)の話などを掲げて賞讃しますし、土地の人々は良い教師を得たというので喜びました。

(左)小泉八雲(ラフカディオ・ハーン) (右)小泉セツ(節子)
小泉八雲・セツ夫妻の肖像(画像提供:小泉家)(写真:『小泉八雲のこわい話・思い出の記』より)

「ヘルン(ハーン)さんは、こんな辺鄙に来るような人でないそうな」などと、なかなか評判がよかったのです。

しかし、ヘルン(ハーン)は辺鄙なところ程好きであったのです。東京よりも松江がよかったのです。日光よりも隠岐がよかったのです。日光は見なかったようです。松江に参りましてからは行ったことがございませんから。日光は見たくないといっていました。しかし、行ってみればとにかくあの大きい杉の並木や森だけは気に入ったろうと思われます。