働き方改革と2024年問題
労働基準法では、組合との間で「三六協定」(時間外労働規則)を締結することで法定外労働が可能であったが、自動車運転士については三六協定による場合でも、「自動車運転者の労働時間等を改善するための基準」(改善基準)が規定されていた。
政府の働き方改革実現会議は2017年(平成29年)3月、「働き方改革実行計画」を策定し、改正労働基準法が施行となった2019年(令和元年)4月には、一般企業については三六協定を締結し、時間外労働時間を届け出ることを求め、一般則として時間外労働時間を年720時間以内と規定し、これが守られない場合は罰則が科されることになった。
しかし自動車の運転士は仕事の性格上すぐには対応できないことから、改正労働基準法の施行から5年間の猶予期間を置き、2024年4月に時間外労働の上限を960時間以内とし、将来的に一般則の720時間を目標とすることになった。
改善基準告知の改正
厚生労働省でも、2022年(令和4年)12月に「改正改善基準告知及び通達」が示され、2024年4月から実施された。
新しい「改善基準告知」では、1日の休息時間がそれまでは「継続して8時間確保」であったのを11時間を基本とし、最低でも9時間を確保することに変わり、拘束時間の上限も、それまでは1日上限16時間(15時間超は週2回以内)であったのを、上限15時間(14時間超は週3回以内)に変更となった。
1ヵ月の拘束時間は原則281時間(従来のまま)、最大294時間(従来309時間)である。ただし従来の4週間の平均の規定(原則1週当たりの労働時間65時間、最大71.5時間)も残し、事業者が選択できることとした。また年間の拘束時間は3380時間(労働協定により最大3484時間へ延長可)から原則3300時間に減少した。
連続運転時間は4時間以内で、従来と同じである。運転中の休憩は、従来は運転士がトイレに行くこともできないような時間であったが、4時間に対して1回当たり10分以上、合計30分以上休憩しなければならなくなった。
この基準改正により、これまでと同一水準の運行本数を維持するためには、より多くの運転士が必要となった。
