「大丈夫、何とかなるよ」と態度で示す
心理学の研究では、人は強い不安を抱えると、その処理に頭のエネルギーが奪われ、考える力や判断力が低下することが分かっています。
とくに思春期の子どもは前頭前野の発達がまだ途上にあるため、親から「このままでは大変なことになる」などと未来の心配を突きつけられると、状況を整理する余裕を失い、「どうせ自分には無理だ」と感じやすくなります。こうした自己効力感の低下は、不登校や回避行動をさらに強めてしまう危険があります。
一方で、親が落ち着いて「大丈夫、何とかなるよ」と態度で示すと、子どもの脳は安心を感じ、扁桃体の過剰な反応が和らぐことが知られています。安心感はストレスホルモンの分泌を抑え、子どもが「もう一度やってみよう」と意欲を取り戻すきっかけになります。
つまり、親が心配を表に出しすぎず、静かに寄り添うこと自体が、子どもの安全基地となり、回復の力を引き出すのです。だからこそ、親ができるのは不安を先回りして伝えることではなく、子どもが自分のペースで困難に向き合えるように余白を残すこと。心理学でいう「共感的態度」こそが、子どもが安心して自分らしい答えを見つける土台になります。
子どもはいつでも親のことを大切に思っていて、だからこそ親の気持ちに敏感です。親が子どもの心配をしていれば、子どもは何とか親の不安を払拭し、親の期待に応えたいとプレッシャーを感じるものです。
そして、自分が苦しい状況であるにもかかわらず、「親のために早く解決しなければ」と、自分よりも親の気持ちを優先させ、無理をしてしまうことがあるのです。
子どもが学校に行けないことを心配した親が、「行ったら何とかなるから、とりあえず行ってみて」「あまり休むと、勉強も追いつかなくなっちゃうし、友だちとも距離ができちゃうよ」と言うと、子どもは「親のために行かなきゃ」と感じ、無理に登校しようとすることがあります。
しかし、実際には学校に足が向かず、行き場を失って街をふらついたり、親や周囲の期待に応えられない罪悪感から、ますます孤立してしまうこともあります。