「家族の敵」をつくることで絆を保とうとする子どもたち
家族に共通の目的ができることで、夫婦の関係が一時、修復される。
家族に共通の「敵」を作り出すことで家庭環境を修復しようとする行為は、ほかにもさまざまな形で表れます。
ある中学生の話です。「授業中、自分だけが2回も当てられた(先生の嫌がらせじゃないか)」「廊下を歩いていたら、近くにいた子が私を避けたような気がした(これはいじめじゃないか)」など、気になることがあれば、小さなことでもすぐに両親に報告していました。そのたびに両親は子どもと一緒に学校に対し、抗議を繰り返していました。
なぜ、彼らはこうなってしまったのでしょうか。
子どもが学校での出来事を報告すると、ふだんは仲の悪いご両親が、そのときばかりは力を合わせて学校に抗議します。
たとえば、「どうしてうちの子だけ二回も当てられたのか」「いじめた生徒に謝罪させろ」など、ささいなことでも「大きな問題」として学校に意見を言うのです。
このように、学校という家族共通の「敵」を設定することで、家族は一時的にチームとして団結し、ふだん疎遠な関係が改善されることがあります。
子どもはそのことを深いところで理解し、自らそうした行動をとっていたのです。