文部科学省によると、2023年度に年30日以上登校せず「不登校」と判断された小中学生は34万6482人で過去最多となったそうです。不登校の児童生徒が増加するなか「じつは、子どもが抱える問題の背景には、親子関係をはじめとする家族の状況が深く関わっているケースが少なくありません」と語るのは、教育者・工藤勇一さんが信頼を寄せるスクールカウンセラー・普川くみ子さんです。そこで今回は、普川さんの著書『3万人の親子に寄り添ってきたスクールカウンセラーが伝えたい 10代の子どもの心の守りかた』から、親子コミュニケーションの極意を一部ご紹介します。
子どもの行動にひそむ家庭の課題に気づく
――子どもの問題行動は、家族を守るためのサインかもしれない
不登校の話題になると、よく「子どもが学校に行けないのは、学校に何か原因があるからだ」と言われますが、必ずしもそうとはかぎりません。
さまざまな要因が複雑に絡み合う中で、不登校の原因がじつは「家庭の不和」にあったというケースを、私はこれまでにいくつも見てきました。
あるご家族のケースです。
小学5年生の長女が「学校に行きたくない」と言って、休み始めました。しかし、彼女は学校生活に不満を抱えている様子もなく、トラブルの兆しも見当たりません。
心配したご両親は、長女と何度も話し合いを重ね、学校や病院にも相談して、不登校の原因を探りました。
そうこうしているうちに、彼女は再び学校に通えるようになりました。原因は結局わかりませんでしたが、ひとまず問題は解決したようだということで、ご両親もひと安心。
ところが2か月ほど経ったころ、今度は小学3年生の妹が「学校に行きたくない」と言い始めたのです。姉と同様に、学校でのトラブルや病気の気配はありません。困惑したご両親は、再び一緒になって、その原因を探り始めました。すると不思議なことに、しばらくすると妹も自然と学校に通えるようになったのです。
この姉妹に、一体何が起きていたのでしょうか。