「同じ悩みを持つ人同士でゆるやかに繋がりながら、自分を大切にして生きてほしい。親の心配より、自分の心配をしてほしいんですよ。」(信田さん)

 

同じ悩みを持つ人とゆるやかに繋がる

大塚 やはり合わない家族とはいったん離れる、というのが最善の方法ですね。

信田 世界のあらゆる宗教で母を否定するものは一つもありません。それだけ社会の常識に反することなのだから、母と離れればマイノリティとして周囲の無理解に苦しむことはあると思います。だからこそ「合わない家族がいるのは自分だけじゃない」と知り、同じ悩みを持つ人同士でゆるやかに繋がりながら、自分を大切にして生きてほしい。親の心配より、自分の心配をしてほしいんですよ。

大塚 私も以前から、「家族をあきらめる方法」を上手に伝えられないかと考えています。あきらめるってネガティブな言葉に聞こえますけど、信田先生がおっしゃるように「大切なのは自分」とわかれば、ほかのことはある意味どうでもいい。ずっと怒ったり、悲しんだりしていたら、疲れてしまいますから。

さかもと あまり突き詰めると、私みたいに病気になっちゃう(笑)。家族は仲良くして当たり前という幻想は捨てたほうがいいです。どうにも合わない人間が、自分のお腹から生まれることだってある。子どもを産んだら誰もが聖母マリアみたいに子どもを愛せるわけじゃない。

信田 そうですね。

大塚 以前取材した人で、「私は親を見捨てる。罪悪感は一生残るけれど、私が幸せになるためにはそれしかなかった」と語った人がいました。

さかもと 血のがった家族とはうまくいかなかったけれど、私は今、再婚した夫、そして娘のようにかわいがってくださる拉致被害者家族の横田滋・早紀江夫妻を心の支えにしています。2度目の結婚式に両親は恐ろしくて呼べず、それで横田夫妻に媒酌人をお願いしたんです。そんな夫妻に恩返しをしたく、バチカンで歌いました。

大塚 私がお話を聞いてきたなかでも、血縁の家族とは縁を切り、自分にとって大切な「他人」を生きる支えにしているという人はたくさんいます。