劇中に出てくる絵すべてを制作

――具体的にはどのようなことをご担当されているのでしょうか?

向井さん:まず、完成した版画以外で劇中に出てくる絵は、全て自分たちが制作しています。

補足すると、版画を彫るための墨線で描かれた版下絵というのも現存しないので、我々が手書きで描き起こしています。また、作品が完成するまでの過程の下絵とか、下絵以前のラフ、といったものになると想像力が必要になります。いわばドラマオリジナルの絵であり、そういったものは考証や演出との兼ね合いを考えながら、いちから描いています。

今回の『べらぼう』では、2人合わせて400点ぐらいでしょうか。

1点の絵でも、実際には複数描いているものもあったりして、ドラマや映画に関わった中で手掛けた量としてはもちろん最高記録ですね。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

たとえば最近だと、大首絵の完成まで、歌麿や蔦重が思案する場面がありましたが、その過程で描いた絵なんかも、もちろんそう。脚本の流れは決まっているので、完成版から逆算して、演出の方と『こうしよう、ああしよう』と思考錯誤しながら進めています。