ゆるふわはすでに溢れていた

雨宮 私はまったくスピリチュアルなものに興味がないのですが、好きな人にそれを言うと、夢のない人と非難されて、それ以上対話になりません。純粋な信仰心は否定しませんし、神社のパワースポット巡りや占いを趣味や娯楽として楽しむのもいいと思います。でもスピリチュアリズムって、今、商業主義の中であまりに安易に消費されていませんか?

中島 そうですね。僕が注目しているのは、女性の身体の神聖視です。自然分娩が素晴らしいとか、母乳が絶対で粉ミルクはダメだとか、まずは近代的な出産や子育ての否定から入る。最近は、子宮の声に従ってありのままに生きる「子宮系スピリチュアル」というのもあるようです。

雨宮 皮膚に負担をかける化学物質で作られた紙ナプキンでなく、エコで体に優しい布ナプキンがいい、みたいなのもありますね。

中島 僕が専門で研究するインドでも同じような現象が見られます。女性の身体や母性を神聖視しているようで、その実、女性を家庭に押し込めて社会参加を阻む。その一方で近代科学を否定するのです。

雨宮 風邪でも絶対に薬を飲まないとか、がんでも医者にかからず自然療法だけという人もいます。それがすべて悪いとは言いませんが、押しつけてくる人もいるので困る。

中島 僕も子どもがいるので、体に良さそうな有機農法の野菜を買いたいと思うし、原発を使っていない電気を使いたいとも思います。でもそういう思考がある一線を越えるとどうなるか。歴史を研究してきた私には、エコからスピリチュアルにいき、そこから自国礼賛にがる思考のパターンがあって、その流れが再び起きているように見えるのです。

雨宮 商業化されたゆるふわなスピリチュアルとか、ゆるふわ愛国とか、そういうものが、自然に私たちの身の周りに溢れていたんですね。あまりに溶け込んでいるがゆえに、昭恵さんは森友問題以前から同じようなことを言って来たのに、ずっと見過ごされてきたのだと思う。

中島 ええ。昭恵さんのことを“単なる無邪気な人”で済ませるのは間違いです。彼女は一国の首相夫人なのですから。

雨宮 「天然」と思っていたナチュラルが、実はナショナリズムに繋がっている可能性もあることに、真剣に向き合う必要がありますね。