「家」を重視する血縁主義から「個」の時代に変化しつつある現代では、弔いの「正解」を教えてくれる人が身近にいないために、葬式やお墓の問題に悩まされる人も多くなってきています。そこで今回は、浄土宗僧侶・鵜飼秀徳さんと日本経済新聞記者・大久保潤さんによる共著『弔いの値段 葬式、墓、法事……いくら払うのが正解か?』から抜粋し、弔いにまつわる「聞きたくても聞けなかった実情」をご紹介します。大久保さんによると、「近年、遺骨を別の場所へ移す『改葬』が急増している」そうで――。
墓じまいするにもお金がかかる
菩提寺などにあるお墓を撤去して遺骨を別の場所に移すことを「墓じまい」と言います。
弔う場をなくすのではなく、先祖代々の墓石型の一般墓の永代使用権を返し、樹木葬など継承者がいらない永代供養墓へと場所やお墓の形を変えるのが一般的です。「改葬」あるいは「お墓の引っ越し」とも呼ばれます。
厚生労働省によると、こうした遺骨を別の場所へ移す「改葬」は2023年度、過去最多の16万6886件になりました。10年前の2倍近くと急激に増えています。
全日本仏教会と大和証券が23年に公表した調査によると、一般墓を持っている人が墓じまいを希望する理由(複数回答)は、「家族の負担軽減」と「遠方であること」がともに5割弱を占めました。地方の過疎化と都市部への人口集中が背景にあります。お墓の維持・管理に加え、遠くまでお墓参りをする経済的な負担を子世代に継承させたくないのは当然の思いでしょう。