オンラインサロンは嫉妬の巣窟だった
オーナーにSNSで紹介してもらえるようになると私のフォロワーが爆増した。そうするとそれまで歓迎してくれていた古参メンバーにもだんだん煙たがられ、陰口を叩かれるようになる。
「主婦は時間あるから」「あの程度の文章じゃサロンの外では通用しない」「フォロワーが多くてオーナーのお気に入りだもんね」「喜ばせ組みたい」
そんな言葉がfacebookグループの外、彼ら個人のSNS間で交わされていた。
たまたま、X(旧:Twitter)で、あるメンバーが個人的につぶやいていたのを見かけてしまったのだ。他のメンバーもそこにコメントをして盛り上がっている。
……これ、絶対私のことだ。
血の気が引いた。ついさっきfacebookで「昨日のブログも面白かったよ」って言ってくれてたのに。
オンラインサロンは嫉妬の巣窟だった。誰がよりオーナーの寵愛を受けるか、誰がより高い地位に立つかを巡る陰湿で人間臭い競争をしていたのだ。
自分が中堅メンバーになってくると新しい人を迎える立場になる。若くてかわいい女の子や、斬新なアイデアや発言であっという間に場の空気を持っていってしまう人が現れると、今度は私が嫉妬する側に回った。
うわ、この人は選ぶ言葉にセンスがある。オーナーも新鮮な才能に特別な視線を送っている気がする。どうしよう……この地位を奪われたくない! ぐぬぬ……! もっともっと頑張らなきゃ!
コミュニティ内の自分の序列を守るため、承認欲求を満たす場所に居座るため、オーナーの寵愛を受けるために全力を注いだ。この集団を追放されたら死ぬ! とまで思った。
ところががむしゃらに活動をしているうちに、なんと、オーナーが不祥事を起こし、今で言う大炎上したのだ。
教祖のように崇められていたカリスマオーナーも、一皮向けばただのセクハラ親父だった。才能に対する特別な視線じゃなくて、ただのエロい下心だった。そうなると途端にキモく思えてくる。なにあのメガネ、超ダサいじゃん。あんな変なメガネかけてるなんて、ろくなヤツじゃない。
ようやく目が覚めた。孤独な主婦だったばかりに、久しぶりに自分の居場所ができたことが嬉しかったし、そこでのヒエラルキーを守ることに必死ですっかり我を失っていたのだ。
しばらくして、そのオンラインサロンは閉鎖された。
