(取材・文・婦人公論.jp編集部:油原聡子)
柴犬が大好き
<『シバのおきて』は犬を通して人がつながっていくヒューマンドラマ。相楽俊一はパチンコ雑誌の編集長。コミュニケーションが苦手で部下に嫌われた末にボイコットされてしまう。新雑誌を作るよう社長に命じられた相楽が飼い犬の柴犬・福助と過ごすうちに思いついたのが、柴犬の専門誌『シバONE』だった>
『シバのおきて』というタイトルを聞いたときに、なんだろう、このほんわかする感じは!という印象を受けました。これまで社会派の作品や何かを背負っている役柄が多かったので、ファニーな作品をやりたかったんです。犬を家族にお迎えしたことはありませんが、動物が大好きだし、特に柴犬が好きだったので、亜衣役のお話は二つ返事でお受けしました。
柴犬を好きになったきっかけはYouTubeです。もともとYouTubeやSNSはあまり観なかったのですが、コロナ禍で柴犬の動画をたくさん観るようになりました。国内だったら「柴犬ロックちゃんねる。」が大好き。柴犬は、自由気ままで融通が利かないところがすごくいい。動物や子どもはどう反応するかわからない。それは予想外の出来事も起きるということでもあるので、そんな状況でお芝居をしてみたいとも思いました。
<亜衣は自宅で料理教室を開いている。何かと愛犬の福助に無理をさせる夫をいさめることも多い、明るくさばさばとした女性だ。福助の心の声を演じるのが柄本時生。俊一は福助を溺愛しているものの、いまいち福助の気持ちがわかっていない。一方、亜衣は福助の言葉を理解しているように描かれている>
亜衣は家族に対してすごく懐が深いイメージがあります。夫の俊一はすごく自由人。俊一が「こうする」と決めたときに「それでいいんじゃない?」と受け止め、背中を押すことができる、おおらかさのあるキャラクター。妻の亜衣と娘の咲がいるからこそ、俊一は自由でいられると思うんです。
亜衣は、福助が何を言っているのか言葉を具体的に理解しているというよりも、「嫌そうだな」とか「眠そうだな」とか、なんとなく感じていることがわかるのだと思っています。犬と暮らしている方は、亜衣が持つ感覚に共感できるのではないでしょうか。福助の言葉を亜衣が100%分かりすぎてしまうとファンタジーになるので、そうならないギリギリのところを狙って演じています。
動物と一緒の撮影は初めてでした。私自身が犬を家族に迎えたことがないので距離感がわからない。犬との距離感を確かめてみたかったから、撮影の合間はなるべく福ちゃんと時間を共にしていて、自分の楽屋にはほとんどいませんでした。人間と同じで、犬もそれぞれ性格が違うので、この子はどういう距離感でいるのが“心地が良いのか”を感じとりたいというのもありました。動物と一緒に過ごす時間はセラピー効果を感じるくらい、癒やされた時間でした。