「表現」見つめる時間がほしい

左から相楽俊一(大東 駿介)、福助(声:柄本 時生)、相楽亜衣(瀧内 公美)、相楽咲(有香)
(『シバのおきて』/(c)NHK)

昨年は大河ドラマ『光る君へ』に源明子役で出演。クールな美貌と迫力のあるせりふがインパクトを残した。今年は大ヒット中の映画『国宝』で終盤の重要な役を担い、朝ドラ『あんぱん』では厳格な女教師役を演じて話題になった

私がこれまで出演した作品の多くは、スタッフの数が10人や15人と少なくて、「自分たちがやりたいからやっている」「これを撮りたい」という思いで走っているような、インディーズ作品。だから現場で意思疎通もとりやすいですし、自分の記録を撮られているような感覚だったんです。

でも、この数年で出演した、朝ドラや大河のような大作では自分の「表現」が見られている。「寄り添ってずっとカメラを回している」のではなく、「決められたカメラワークの中でインパクトのある表現を提示できるか」を見られている感覚です。朝ドラや大河は、作品のテーマを大勢の人にどう伝えるのかを意識することで表現も変わってくる。現場での先輩の居方(いかた)も含めて勉強になりました。

すべての作品で学びと人との出会いがあります。『光る君へ』のスタッフの方が『シバのおきて』の現場にいらっしゃって、この再会というのがすごくうれしい。ちょっとでも成長した姿を見てもらいたいんです。

この数年は、自分がやりたい作品がたくさんあって複数の作品を並行して忙しく走ってきました。原点に戻って、インディーズとまではいかなくても比較的小規模な作品で、何カ月かかけて映画の時間に浸りたいという思いはあります。もう1度「表現」を見つめる時間を作ることが自分にとって豊かな時間になるんじゃないのかなと思っています。

俳優の仕事は、別の人の人生を生きることができるのが面白いんです。私は実生活で犬と暮らすことは難しいですが、ドラマなら犬と生活する母親として生きることができる。「こんな事件があったんだ」とか「歴史上は描かれていないけれど、少し違った視点で見ることもできるかもしれない」とか、作品を通して学ぶこともたくさんあります。一生勉強だし、一生修行していける仕事です。

これからもっと挑戦してみたいのは時代劇です。伝統芸能が好きですし、私自身が日本舞踊を習っていることが大きいかもしれません。着物を着てその時代の言葉で昔の日本人を演じることは、いまのわたしにとって、表現がふくよかになっていく気がします。今までの歴史があるから今の自分たちがいる。歴史は繰り返すものだから、歴史を知らないというのは未来も読めないということ。そういった意味でも時代劇を通して、「気が付かなかった新たな発見」を感じていきたいです。

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ドラマ10 「シバのおきて~われら犬バカ編集部~ 
NHK総合 毎週火曜 夜10:00〜10:45
【原作】片野ゆか「平成犬バカ編集部」
【脚本】徳尾浩司
【音楽】YOUR SONG IS GOOD
【出演】大東駿介/飯豊まりえ/片桐はいり/こがけん/篠原悠伸/水川かたまり/黒田大輔/有香/柄本時生/津田健次郎/瀧内公美/勝村政信/松坂慶子