≪職場の“あるある”、歌います≫
「アドバイスしたがる先輩、うとまれがち」

嫌われ者になったとき助けてくれたのは

吉本新喜劇でも、たくさん学ばせてもらいました。誰か一人のギャグを生かすための和、そのベースとなる信頼関係。新喜劇は、みんなで“笑い”をつくる会社のようなもの。「自分だけがウケればいい」ではだめなんです。

楽屋は師匠や先輩とも一緒ですから、気もつかいます。競馬やパチンコの話題が多い楽屋で、若手にとってレジェンドのような存在の桑原和男師匠と仲良くなったきっかけは、「ピアス」でした。師匠がなぜか、耳にピアスの穴を開けるピアッサーを持っている。

「人からもらったけど、さすがにこのトシでなあ」とはにかむ師匠の前で、「これ、いただいてもいいですか」と言って、その場で自分の耳にガシャン、ガシャン。穴を開けたら、「おまえ、根性あるなあ」と。これも思わずきかせたハッタリですが、それ以来、師匠との距離はぐっと縮まりました。

僕の一番のどん底時代といえば、相方のHGが「ハードゲイ」のキャラクターで大ブレイクしたとき。HGがピンで売れたことについては、嫉妬よりも「うちの相方、すごいやろ」「おもろいな」と思って見ていました。心が折れたのはそのあとです。

プロレスの手法を取り入れ、“正義”のハードゲイ(HG)に対抗する“悪役”として、僕はリアルゲイ(RG)を名乗るようになったのですが、これがHGのブレイクに安易に乗っかっていると捉えられ、非難の嵐。ネット掲示板に「地元の恥」など罵詈雑言を書き込まれ、すっかり世間の嫌われ者になってしまった。

そんな僕を助けてくれたのが、芸人の先輩たちです。「頑張りや」と声をかけてくれて、飲み会に誘っては、その席で「おまえ、今度はどんなキャラでいくか」と、一緒に考えてくれたりしました。

先輩たちから見た僕は、「HGに置き去りにされたかわいそうな子」「負けている弱い子」。そういう人には、まわりは優しくするし、手を差し伸べてくれます。

デビューしたての自我の強い若手ならば、「いいです、自分の力でなんとかします」となるところでしょうけど、僕はそういうとき、素直に身をまかせるタイプ。強がりのハッタリが4割、でも6割は弱さをさらけ出す。そのバランスで先輩たちにかわいがってもらいながら、今日までずっと来ているような気がします。