連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)。朝ドラ通算113作目となる同作は、明治時代の松江を舞台に『怪談』で知られる小泉八雲の妻、セツをモデルにした物語。ヒロインの松野トキ役を高石(高ははしごだか)あかりさん、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じ、怪談を愛する夫婦の何気ない日常が描かれます。史実では来日後、記者の仕事を捨てて40歳で松江の英語教師となり、執筆活動を続けた八雲ですが、なぜ彼はそこまで日本に惹かれたのでしょうか?『八雲とセツを追いかけて-神様と妖怪に出会う旅-松江・境港・出雲』の著者で文筆家の譽田亜紀子さんが謎に迫ります。
八重垣神社
松江駅周辺を歩いていると「八重垣神社」と行き先を掲げた市営のバスを見かける。駅から出て各地をまわるバスは、観光客の大切な移動手段となっている。
そのバスに乗って20分、丘陵の麓に鎮座する八重垣神社に到着した。
八重垣神社には『古事記』に登場する素盞嗚尊とその妻、稲田姫命の夫婦神が祀られている。そのため古くから縁結びの神社として恋仲の二人はもとより、良縁を求める人に絶大な人気を誇る。
八雲はここを親友の西田と訪れていて、その様子を「八重垣神社」という文章に詳細にまとめているのだが、文中で御祭神である素盞嗚尊がのちに妻になる稲田姫命に一目惚れして八岐大蛇から命を救った、という、夫婦になるきっかけになった『古事記』の一節を引いている。その一節に登場するのが、
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」
である。