おかしな連中が出入り

奇行も目立ちはじめた。

具体的には、なにもない空間に向けて合掌する、授業中にとつぜん真言のようなものを唱え出す、筆箱に大量の昆虫の死骸を詰め込む、ノートに意味不明な落書きをするなどで、女子生徒の中には周平君のことを本気でおそろしがり、保健室登校になってしまう者もいたそうだ。

『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(著:蛙坂須美/竹書房)

周平君の家におかしな連中が出入りしている、との噂もあった。

その人たちは皆一様に周平君とお揃いの経文Tシャツを身につけていたらしく、どうやら周平君の家は彼らの集会所になっているようだった。

近隣住民からすれば、そのような状況は不気味且つ不安である。

とはいえ、経文の書かれたTシャツを着て町中を闊歩してはいけないという決まりはない。彼らがどんな宗教に帰依していようが、法に抵触しないかぎり、信仰の自由は保障されねばならない。

実害がない以上、気持ちが悪いからやめてください、というわけにはいかないのだ。

もちろん壮亮さんも周平君のことを薄気味悪いと思っていた。けれど登校班が一緒だから、朝には必ず行動をともにしなければならない。

もはやトレードマークとなっている経文Tシャツを着た周平君を見て、道行く人たちは顔をしかめたりひそひそ話をしたりと、思い思いの反応をする。

近くにいると自分までもが異常者の仲間入りをしたようで、学校までの道のりが心底苦痛だった。