何よりも贅沢なひととき
特に印象的だったのは、マミーのアパート。高い天井、光が差し込むサロン、奥に広がるキッチン。アンティークとモダンが心地よく共存する空間が、彼女の人生を物語っているようでした。
マミーは元ジャズシンガーで、世界中を旅した経験の持ち主。明るくユーモアたっぷりで、タルトタタンが「失敗から生まれたスイーツ」ということや、マドレーヌの貝殻の形の由来など、料理にまつわる小話もテンポよく織り交ぜながら進行。しかも、デモンストレーション型ではなく、全員が実際に手を動かすスタイルなので、あっという間に作業に没頭していきます。
工程は決して難しくなく、マドレーヌを型に入れるときなど、「え、こんなに雑でいいの?」と思うほど。家庭の味としてのぬくもりがあり、初心者でも安心して取り組める雰囲気がありました。
そして、料理を終えたあと、ふと思ったのです。本格的なブーランジェリーのほうが、味は上かもしれない。でも、自分たちで作ったものに込められた時間、出会い、笑い声。そこには比べものにならない「何か」が詰まっていました。
食べきれなかったマドレーヌは、翌朝の朝食に。自分で作ったマドレーヌで始まるパリの朝――それは、何よりも贅沢なひとときでした。
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※本稿は、『新しいパリでしたい100のこと~ガイドブックに載っていないパリひとり旅』(大和書房)の一部を再編集したものです。
『新しいパリでしたい100のこと~ガイドブックに載っていないパリひとり旅』(著:松﨑桃子/大和書房)
パリは大人が遊べる街。
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