就職・転職の失敗の7割が「視野狭窄」

その根本的な“原因”について考えるために、ハーバードビジネススクールが行った調査を見てみましょう。[2]

この研究は、日本をふくむ世界40カ国のヘッドハンターや人事部門の責任者1000人超にインタビューを行ったもので、過去にたずさわった転職の実例をピックアップした上で、働く場所を変えたことによって以前と同じパフォーマンスを発揮できなくなったり、人生の満足度が下がってしまったりした人に共通する要素を抜き出しました。要するに、良い仕事を見つけられずに後悔した人たちの共通項を調べたわけです。

『新版 科学的な適職』(著:鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)

その結果をひとことでまとめれば、次のようになります。

*就職と転職の失敗は、およそ7割が「視野狭窄」によって引き起こされる

「視野狭窄」とは、ものごとの一面にしか注目できなくなり、その他の可能性をまったく考えられない状態を意味します。

一例を挙げれば、調査のなかでもっとも多かった失敗は「下調べをしっかりしなかった」というものでした。

普通に考えれば、キャリア選択の場面では徹底的なリサーチを行うのが当たり前の話。もし友人から「直感で転職先を選んだ」などと言われたら、誰もが「もっと下調べをしなさい」とアドバイスするでしょう。

が、いざ自分のことになると、なぜか私たちは十分なリサーチを怠りやすくなります。

ヘッドハンターたちの証言によれば、転職先の企業に「業績はどのように査定していますか?」や「仕事の裁量権はどれぐらい確保されていますか?」といった質問をぶつけた人はかなりの少数派だったとか。

彼らが「もはや十分な情報を手に入れた」と判断したのか、はたまた「もう自分の進路は間違いない」と思い込んでしまったのかは定かではないものの、どうやら多くの人は、「適職選び」という人生の一大事においても、意外なほど広い視野を維持できない傾向があるようです。

2.Groysberg, Boris, and Robin Abrahams. (2010)Five Ways to Bungle a Job Change.