職探しにまつわる失敗例

そしてもうひとつの問題が、人類の脳に備わった「バグ」の存在です。誰の頭のなかにも大量の「バグ」が生まれつき住みついており、そのせいで私たちは、人生の重要な選択を高い確率で間違えてしまうことがわかっています。

偏見、思い込み、思考の歪み、不合理性─―。

(写真提供:Photo AC)

バグの呼び名は様々ですが、いずれにおいても人間の脳には生得的なエラーが存在し、大事な場面でいつも同じような過ちを犯すようにできているのです。職探しにまつわる失敗例をいくつかあげましょう。

*「ひとつの転職エージェントや友人の紹介だけをもとに転職を決めたら、まったく社風になじめない会社だった」

何かを決める際に、手軽で新しい情報だけに頼ってしまうのは、人間が持つ定番のバグのひとつです。ヒトの脳には難しい決断をできるだけ避けようとする心理傾向が備わっており、専門的には「利用可能性ヒューリスティック」と呼びます。

*「就職した企業が自分に合っていないのに、『転職しても改善するとは限らないし……』などと考えてしまい、いつまでもダラダラと居座ってしまう」

あきらかに現状を変えたほうがいいにも関わらず「いまのままでいたい……」と思ってしまうのも人間の基本的な心理です。これは「現状維持バイアス」と呼ばれ、良い就職のチャンスを逃してしまう原因になります。

*「憧れの会社に入ったまではよかったが、時間が経つうちに『もっと良い仕事があるのではないか?』と思えてきた」

どんなに夢にみた仕事に就こうが、長期間にわたって同じ喜びが続くはずはありません。にも関わらず、大抵の人は夢がかなった後の感情を高く見積もりすぎ、結果として大きな落胆を味わうことになります。これは「インパクト・バイアス」と呼ばれるバグの一種です。

当たり前ですが、就職や起業の行く末を完全に見抜くのは不可能ですし、最終的には実際に仕事を始めてみないと実態がわからないケースも多いでしょう。が、一方では、事前に少しリサーチや分析の量を増やしただけでも、これらの失敗が起きる確率をかなりのところまでふせげたのも事実。このバグの問題もまた、あなたの将来を誤らせる大きな論点のひとつです。