ハーバード・ビジネススクールが行った調査によると、就職・転職の7割は「視野狭窄」が原因で失敗するのだそうです。サイエンスジャーナリストの鈴木祐さんは、「『好きなことを仕事にしよう』『給料の高い仕事を選ぼう』といった一般的なアドバイスは、実は科学的根拠に乏しく、むしろ不幸につながる可能性がある」と語り、研究データに基づいた科学的な適職選びを勧めています。そこで今回は、鈴木さんの著書『新版 科学的な適職』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
人間の脳は職業選択に向いていない
なぜこと職業選択という重大な場面において、私たちの視野は狭窄してしまうのでしょうか?
幸いにも近年では職業選択に関する研究が進み、多くの論文がこの問題の答えをあきらかにしてきました。すべての知見をまとめると、私たちがキャリア選びを間違える理由は大きく2つに分かれます。
(1)人類の脳には、職業を選ぶための「プログラム」が備わっていない
(2)人類の脳には、適職選びを間違った方向に導く「バグ」が存在している
第一に、私たち人類には、そもそも自分に適した仕事を選ぶための能力が備わっていません。なぜなら「職業選び」とは、現代になってから初めて浮かび上がってきた問題だからです。
それもそのはずで、人類史の大半において、人間は職業選択の自由とは無縁の暮らしをしてきました。