錯覚の「達成感」でも人間のモチベーションはブーストする

「小さな達成」の内容は、仕事にさえ関係していればどのようなものでも構いません。

企画書の作成に必要なデータが見つかった、いままで悩まされてきたバグが解消された、マネージャーから褒められた……。

(写真提供:Photo AC)

どんなに小さな達成でもあなたのモチベーションは高まり、そこには“やりがい”の感覚が生まれます。

より身近な例として、コロンビア大学の実験を見てみましょう。[2]被験者たちは「特定のカフェで使えるスタンプカード」を渡され、次の2つのパターンで自由にコーヒーを買うように指示されました。

(1)「コーヒーを10杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す。

(2)「コーヒーを12杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す。ただし、そのカードにはすでに2つのスタンプが押してある

要するに、どちらのパターンでもコーヒーを10杯買わないと無料のサービスを受けられない点は同じであり、普通に考えればすべての被験者が同じようにカフェに通うはずですが、結果は大きく異なりました。現実には「コーヒーを12杯で1杯サービス」のカードを渡されたグループのほうが、スタンプの貯まるスピードが速かったのです。

研究チームは、この現象を「前進の錯覚」と呼んでいます。「すでに2つのスタンプが押してあった」おかげで達成感の錯覚が生まれ、その感覚がモチベーションを高めたわけです。ただの錯覚でもやる気がわくのだから、私たちの「達成感」好きは筋金入りでしょう。

2. Ran Kivetz, Oleg Urminsky, Yuhuang Zheng(2006)The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected: Purchase Acceleration, Illusionary Goal Progress, and Customer Retention